高速インターネット回線を利用しているのに最近どうも速度が出ない。ping(アンテナ)が悪くてゲームができない…。IPv6がいいとは聞くけどそもそもなんで遅いの?どういう理屈で速くなるの?
この記事ではそんなネットが遅くなる原因の歴史と、IPv6の特徴をわかりやすく解説していきます。
ネット時代のはじまり
子供の頃、歩ける範囲が世界の全てだった頃を覚えているでしょうか。インターネットがない時代、コンピュータはそんな狭い世界に閉じ込められていました。が、ひとたびネットに繋がると世界中の情報にアクセスでき、離れた場所にいながら多彩なコミュニケーションが取れるようにもなりコンピュータの価値が一気に高まりました。
時は流れてネット回線は高速・常時接続の(定額)ブロードバンド時代に入っていきます。より早く、より快適に。それまで低速ながらもナローバンドの恩恵を享受してきた人たちはこぞってCATV、ADSLなどの高速回線を求めました。常時接続はライフスタイルを変貌させ、高速回線はコンテンツをよりリッチなものへ変えていきました。
ブロードバンド=高速道路
初期インターネットの「どこへでも行ける」感が車やバイクを手にしたような便利さだとするなら、高速インターネットは「早く快適に行きたい」に応える自動車専用道路を想像するとわかりやすいです。
さて、車が普及してみんなが遠出しようするとどうなるでしょうか。そう、渋滞が発生します。事故渋滞、坂道渋滞…種類は色々あるけれど、ことインターネットの夜間渋滞においてはIC(出入口)渋滞が主です。
回線渋滞とのたたかい~IPv4編~
人、もとい家とネットを繋ぐのがか細いメタル線(電話)1本だった頃から人類と回線との戦いは始まりました。この概念は昔も今も変わっていません。そしてその対処方法もまた変わっていません。基本は「逃げる」です。
高速が大渋滞で当分解消しそうにない場合、あなたならどうするでしょうか。きっと迂回するでしょう。道が渋滞している以上、打てる対策はこれに尽きます。
ダイヤルアップ時代~0.05Mbps
PCを電話網でプロバイダに接続、パスワード認証ののちインターネットに取り次いでもらう一連の流れをダイヤルアップ接続といいます。この頃のIC渋滞はズバリ「話し中で繋がらない」でした。
奇しくもこの時代、登録した通話先に限って電話代が定額になるNTT東西のサービス「テレホーダイ」開始が23時からでした。今か今かと痺れを切らしたユーザーが殺到する23時は設備のキャパオーバーで繋がらないため、10円課金して2~3分前乗りしたり、酷い時はインターQ(ダイヤルQ2)で接続して急場をしのぐ、なんてこともありました。
そんな「テレホーダイ」も今日、サービス終了が発表されました。お世話になりました…
ADSLの登場~1.5Mbps
ADSLは従来のダイヤルアップと同じメタル線を利用するため引き込み工事が不要で、また電話と別の高周波帯を使うためメタル線のポテンシャルを最大限引き出した待望の技術でした。「電話線なんてトトロの時代からあるのになんで今頃!」と思った方も多いかもしれませんが、高周波技術の発展の賜物であり、逆に登場が早かったとしてもそれを活かすだけのPCがなかったとも言えます。
さて、この頃の回線事情ですが、なにより「NTT局舎からの距離で信号が減衰する」というADSLの仕様により速度は完全に『ガチャ』でした。ノイズに弱い特性をフィルタで幾分か対策しましたが宅内を出るとどうしようもなく、「1Mbpsも出ない」「うちは5メガ出た」など悲喜こもごもが巷に溢れました。
サービスは1.5メガ、8メガ、12メガと拡充されていきますがNTT局舎との距離は如何ともし難く、いくら待っても根本的な解決(引っ越し?)を得ないままやがて訪れる光回線の時代を待つのでした。
CATVという強回線~30Mbps
そんなADSLに対して、光回線登場までのあいだ優位性を保ったのがCATVインターネットでした。メタル通信ながら距離による信号の減衰がなく安定するため「弱点のないADSL」といったサービスで、設備も収益性の高いマンションには備え付けであったり、テレビが映らない地域のインフラとして敷設が済んでいたりで導入がスムースでした。
しかし時代が進むにつれてCATVの隆盛にも陰りが見え始めます。家族全員が個々の端末でリッチなコンテンツを楽しむ現代においては天井の見え始めたCATVの通信速度ではボトルネックが発生します。そして当初はメリットだった導入ハードルの低さも、「マンションの規約で光回線が引けない」とか「テレビの映らない田舎には光回線が来ない」などCATVのある環境が逆に足枷のように高速回線への移行を阻んでいました。
余談、電力線インターネットの話
家庭に広く普及しているインフラの中で、CATV・電話線に続いて白羽の矢が立ったのが電力線通信(PLC)俗に言うコンセントインターネットでした。研究が進んだ結果、シールドされていない電力線ではノイズの問題があり国内で提供されることはありませんでしたが「電力会社ならではの強みを生かしたサービスを!」という理念はのちに実を結ぶことになります。
家庭用として小規模PLCは製品化されました。
夢の光ファイバー~100Mbps
満を持して登場した光回線は距離によっての減衰もなく、局舎(NGN)までの速度に至っては理論値そのまま出るなどまさに完成されたサービスと言えました。Yahoo!BBの参入などで低価格化が進むADSLに比べると割高感はありましたが、これまでベストエフォートの名のもと、極端に遅い回線を受け入れざるを得なかったユーザーは次第に光ファイバーを選択するようになります。
時代もこれを後押しします。2005年にYouTubeがサービス開始、2006年にはソニーが専用回線を必要としないネットワークサービスを提供するPS3を発売。インターネットの利便性が高まっていくにつれてより高品質な回線への需要も高まっていきます。そこで浮上したのがマンションタイプの速度低下問題です。
集合住宅の回線事情
CATVの項で触れたとおり、回線事業者は一棟への引き込み工事で複数の契約が見込めたり、オーナーは一括契約することでインターネット無料を謳えたりと、集合住宅とネット完備は親和性が高い関係に見えました。
しかし、通信量の増加が当初の目算を大きく超えたことにより「速度が出ない」「通信が途切れる」といった問題が徐々に増えていきます。これは1本の回線をマンション全体で共有することに起因します。こうなるともう自前で戸建て用回線を契約するか、引っ越しするしかありませんでした。
家庭用Wi-Fiという選択も
集合住宅では回線の見直しに理事会の承認が必要であったり、独自に引き込むにも配線設備(MDF)の都合上で早いもの勝ちであったりとリモート・在宅ワークにおいて死活問題を抱えているユーザーも少なくない中、5Gの登場により無線の固定回線という手段が一筋の光明となっています。設置場所の制約はありますが工事不要で使い放題という商品設定は逃げ場所のないマンションユーザーにとって大きなメリットと言えます。
戸建て用回線すら混雑する時代へ~
そんな中、光回線の販売ルールが大きく変わったことで宅内まで光コンセントが来ていても混雑に巻き込まれるところまで、ネット環境は変化していきます。
コメント